駆け足の四ヶ所めぐり
〜実り多き四国旅〜

(山口陽三筆)


平成17年8月26日(金)〜9月2日(金)、四国に一人旅に出た。八日間で四県をまわる旅と なったのでわりと慌しかったが、毎日が充実してとても楽しい旅であった。

それぞれの四ヶ所めぐり
観光地 小豆島(香川)-- 道後温泉(愛媛)-- 四万十川/足摺岬(高知)-- 大歩危(徳島)
野球場 みろく球場-- 香川県営第二球場-- 坊ちゃんスタジアム-- 蔵本球場
丸亀城-- 松山城-- 宇和島城-- 高知城
高校 丸亀高校-- 済美高校-- 宇和島東高校-- 土佐高校

凡例 観光(黄色)
野球(水色)
食(ピンク)
移動(灰色)
事前準備 四国の理由
日程決定
行程決定
宿泊先選定
8月25日(木)

台風

横浜→丸亀(相鉄バス)
8月26日(金)

四国上陸、その日に離陸

丸亀観光(丸亀高校・丸亀城)
瀬戸内海と俺
四国村
「わら屋」で讃岐うどん
小豆島
オーキドホテルで海鮮コース
8月27日(土)

四国大学リーグどさまわり
から由緒ある温泉へ

みろく球場(四国学院大VS徳島大)
道後温泉と俺
讃岐うどん
香川県営第二球場(香川大VS愛媛大)
高松→松山へ移動
玉菊荘で海鮮コース
道後温泉
8月28日(日)

松山の長い一日

坊ちゃんスタジアム(愛媛大VS高知大)
坊ちゃん
スタジアムと俺
松山城
学校めぐり(愛媛大・松山大・松山北高)
坊ちゃんスタジアム
(愛媛MP VS 香川OG)
松山周辺で一人居酒屋(焼き鳥等)
8月29日(月)

済美の化学変化と
宇和島での一目惚れ

道後公園
宇和島城と俺
済美高校野球部見学
松山→宇和島へ移動
宇和島観光(宇和島城・宇和島東高)
「ほづみ亭」で刺身・地鶏・鯛めし
8月30日(火)

高知の大自然

宇和島から高知入り
太平洋と俺
四万十川
足摺岬
かつおのたたき定食
足摺岬→高知(高知市内)へ移動
「しゅん」で鯵・鯨・鮎等
神奈川からの連絡
8月31日(水)

高知のんびり

高知城
高知城(俺ぬき)
土佐高めぐり(学校・グラウンド)
柏井(大学後輩)と会食(「たたき亭」でかつお等)
9月1日(木)

アイランドリーグ再確認と
感動の阿波尾鶏

高知から徳島入り
大歩危と俺
大歩危
蔵本球場
(徳島IS VS 香川OG)
「とりとり」で阿波尾鶏の焼き鳥
9月2日(金)

さらば四国

徳島→東京(東九フェリー)
太平洋と俺
事後報告 まとめ
自宅での俺


四国の理由

年始に長崎に一人旅に出たときは、長崎であることにあまり大きな理由はなかったが 今回の四国は理由があった。1番大きな理由には、野球人を自負する自分として、 四国アイランドリーグ(石毛宏典氏がこの年に立ち上げた野球の独立リーグ)を 見ておきたいということがあった。2番目には両親の新婚旅行が四国一周だったと 聞かされており、両親の原点、家族の原点である地を1度訪れてみたいというのは 前々から思っていたことでもあった。


日程決定

実は日程決定からしてとても大変であった。プラン自体は春先から考えていたのだが、 制約として下記があった。 要するにバイオリンの発表会のことだけ考えれば早ければ早いほどいいのだが、 早すぎると四国大学リーグが見られない。相模原クラブの勝ち進み具合は春先の 段階ではわからないので、「勝った場合」「負けた場合」の両方を想定して、 四国アイランドリーグの日程をにらみながら決めていった。こうして「勝った場合」には クラブ選手権全国大会の直後、「負けた場合」にはクラブ選手権全国大会の直前、 というところに日程が落ち着き、1週だけはクラブを休ませてもらおうと決めた。

日程決定がこんなに困難なら何も今年行かなくてもいいのではないかとも思った。 というのもバイオリンの発表会は2年に1回の開催なので来年にはない。四国旅行を いっそ来年に持っていってもいいのではないかとも思った。ただし、四国アイランドリーグが 来年以降もしっかり続いていくかどうかがわからないので思い切って今年にした。 結果的にはバイオリンの発表会が、先生の都合で来年2月にまで延期されたりした。また、 会社の勤続5年で与えられる50ポイント(5万円分。用意されたパンフレット内の普通の買い物の他、 旅行での宿泊などにも使える)を使えるのが来年2月までだったのも、あとから気づいた ことではあるが今年のうちに決行しておいてよかったということにはなった。


行程決定

日程とともに、旅の大枠を決めていった。四県をまわるので、基本的に時計回りか 反時計回りのどちらかで隣の県に移動していくことを考えていた。お金がかかりそうなので 飛行機は考えていない。まず、関東と四国のアクセスとして、フェリーならば徳島か高知、 夜行バスならば香川が拠点になることを知る。フェリーで高知入りしてその日のうちに アイランドリーグを見て、高知の後輩と飲んで、それから愛媛→香川→徳島と移動して フェリーで帰ることを最初に思いついたが、アイランドリーグの日程とマッチしない。 また、高知へのフェリーも毎日でなく週2回程度しか運行しておらず、日程の制約が多い。 アイランドリーグの日程については高知県以外の県ではナイターも行われているのに 高知ではナイターがない。昼にフェリーで到着しても球場への移動も含めると時間的に観戦が厳しい。 断念した。

結局、香川に夜行バスで入って、愛媛→高知→徳島と移動して徳島からフェリーで 帰る行程とした。夜行バスならば毎日出ているし、朝に到着するので到着日も有効に使える。 こうして大枠が決まっていった。

そのあとは各県でどこを観光するかを決めていった。第1目的が野球観戦であり、 まわる県の順も野球の日程を元に決めていった部分もあるので、野球については問題ない。 あとは野球以外の観光としてどこにするか、だった。だいたい1県あたり2日間あるが、 移動の時間と野球観戦の時間があるのでそれほど観光には割けない。選択と集中が 必要だった。

などを条件に、旅の情報誌を見て絞っていった(余談だが、「まっぷる」よりも「るるぶ」が わかりやすいと思った)。香川県では、中心地・高松にいまいち 魅力を感じられなかったために思い切って捨て、今後そうそう行く機会もないであろう 小豆島を入れた。琴平も香川を代表する観光地とは思ったが行きたい気持ちはわいてこず、 野球が中止で時間ができた場合の補欠にとどめ、やはり捨てた。愛媛県では、温泉に 入りたいということであっさり道後温泉に決定。地理も中心地・松山であるのも大きかった。 愛媛ではゆっくり時間をとれそうだったのでもう一つ行くことにし、高知への移動の 拠点にもなり、海・城の魅力もある宇和島にした。自動車を使わないつもりなので しまなみ海道や今治は捨てることにした。高知では四万十川と西側の海。 大学の野球部の後輩・柏井が高知市内にいるので宿泊は高知市内にしてここで 柏井に魚のおいしい店に連れて行ってもらうことにした。徳島では大歩危・小歩危。 野球観戦も入れたために徳島では時間があまり取れそうになく、ここだけ。 南側の海や鳴門の渦潮などもはずさざるを得なかった。

こうして旅の内容もだいたい決まり、電車の時刻表も調べてタイムスケジュールが できあがっていった。


宿泊先選定

頭にきたのがこれである。会社の勤続5年のごほうびとして前年までは金銭で5万円もらえて いたものが、筆者の年度から "なんとかポイント" 50ポイント分(5万円相当)に変更になった。 経費削減の一環である。このポイントがまた使いづらい。旅の宿泊料金にも使えるのだが、 用意されたパンフレット内のホテルの中からしか選べない。それでもそこそこ条件のいいホテルもあり、 バリエーションもあるので問題ないかと思ったのだが、いざ予約の段になると 「2名以上でないと予約できない」という設定になっているところがすごく多い。 該当のホテルに直接アクセスしてみると1名でも泊まれるというのに、会社のこの システムを通すと1名で予約ができない。こんなおかしなことがあるか。 会社はあくまで、使いづらく、使いづらく設定してポイントを使わせないつもりなのか。 文句も言ってやったが、道後温泉以外の、小豆島・宇和島・高知・徳島の宿泊先は 結局このポイントで予約した(道後温泉は1名で予約可能なホテルが結局なかった)。



8月25日(木) 〜台風〜

24・25日は南足柄の塚原という場所で会社の宿泊研修だった。ところが台風が近づいている ということで、25日の研修終了が、当初予定の17時から15時すぎに早まった。 これは助かった。17時に終わっていても1度帰宅して荷物を持ち替えて出発することは 可能だったのだが、時間の余裕ができて助かった。ただし台風は心配ではあった。 横浜を出発したバスはおそらく東海・近畿地方を通って四国に入るだろう。 東海あたりで台風と鉢合せしそうである。案の定、バスで走行中、外はかなりの雨と 感じられたが、無事に着くことはできた。


8月26日(金) 〜四国上陸、その日に離陸〜

四国という地に初めて降り立った。最初に踏んだ地、それは香川県丸亀市である。 意外と思われそうではある。バスは高松で降りることもできたのだが、丸亀を軽く 観光してから高松に移動しようかと計画しており、丸亀まで行った。四国に降り立って みての感想、あまり特別なものはなかった。両親の原点の地? でも、不思議と懐かしさを 感じる、などのこともなかった。当たり前である。筆者が生まれる前の話である。 印象としては長崎に着いたときに似ており、「ここが埼玉だとか群馬だとか言われた としてもそんなに違和感ないな」というかんじだろうか。

早朝の丸亀市。目的地である丸亀城までどう行ったものかと駅の周辺図をながめていたら、 城の近くに丸亀高校もあることを知った。ついでなのでここにも行ってみることにした。

丸亀高校を大して知っているわけではないのだが、何年か前に甲子園出場の経験が あったはずである。なおかつ野球が強いだけの高校ではなく、進学校でもあるらしい。 というのも、甲子園に出場したときにテレビ番組『熱闘甲子園』で、進学校ゆえに彼らが 宿舎で受験勉強もしているという姿が放映されていたのが印象に残っていた。 ほぼありえないことかと思うが例えば筆者の母校が甲子園に出場しても同じような 光景になるだろう。そんなことで、少し親近感を感じたのだが、その高校が目で見られる 位置にある。行ってみることにした。グラウンドの写真をしっかりと撮ることはできなかったが、 ごく普通の高校のグラウンドというかんじ。他部と共用なのだろう。ここから甲子園球児が 出たというのは意外に感じた。

正門
グラウンド

続いて丸亀城へ。石畳が有名な城らしい。確かに石畳がけっこう長いというか高いというか。 天守閣にも入ったがあまり大きくなかった。

亀山公園外堀
公園内に野球場
丸亀城の前から 周囲を見渡せる
丸亀城天守閣から 市内を見下ろすように

丸亀から高松へ移動。そこを拠点として琴平電鉄に乗って屋島へ移動。 「四国村」なる施設に行った。ここは「四国各県から移築・復元された、江戸から 明治時代の民家が、広大な敷地に点在している。」(るるぶ四国版より引用)施設である。 敷地内だけは別世界というかんじで一つの森みたいになっていて順路をたどっていく。 江戸から明治とは紹介されているが、平家落人が隠れ住んだ徳島の山の中の家まで 再現されている。わりとおもしろかった。香川県内の施設ではあるが、四国四県の 伝統的なもの(主に建造物)が寄せ集められている。四国村自体が香川になければならない 理由は何もないと思うが、香川というのは四県を代表するような存在なのだろうか? 確かに高松は四国の玄関口とも言われるが...。

屋島駅から向かう途中 高くそびえる山、その途中に四国村
かずら橋 大歩危・小歩危(徳島)のものを再現
小豆島農村歌舞伎舞台 小豆島(香川)のものを再現
なんとか灯台
染が滝 フランスかなんかの庭園をモチーフに?

四国村の横にある「わら屋」で昼食。「日本一のうどん屋」なるキャッチコピーを 平然と店名の横に掲げている。誰がどう日本一と認めたのか、 などと思って入って 食べてみると(釜あげうどん)、なるほどこれがおいしい。日本一でもいいや、他のうどんはなくても いいかも、とも思った。簡単に言うとつるつるしてこしがある。あと長い。 あとは一般的な讃岐うどんの説明に任せる。

高松に戻って小豆島行きのフェリーに飛び乗る。香川での最大目的地に渡った。 瀬戸内海を、フェリーで1時間。船酔いもなく気分よく乗れた。土庄港に着いて 平和の群像を撮影。「二十四の瞳」の登場人物がモデルになっている群像である。 「二十四の瞳」自体はまったく知らなかったのだが、四国行きも決まってかなり 日程が押し迫ったころにたまたまテレビで「二十四の瞳」のドラマ(黒木瞳主演)を やっていて見る機会があった。その舞台が、自分が観光予定に入れた小豆島だったので、 よけいに「これは行かなきゃ」「ちゃんと見なきゃ」の思いを強くした。

四国村でも、小豆島でも思うが、最初に丸亀で感じたイメージとはだいぶ違う。 何が違うかと言うと、山がすごく多くて高い。見上げてしまうくらい天高くまで、 緑色の壮大な山がそびえていっている。1個の山がドーンとあるわけではない。 そういった山々が連なっている。この光景は特徴的だと思った。


(左:フェリー内から瀬戸内海、右:乗船したしょうどしま丸)

港からすぐの「オーキドホテル」にチェックインしてシャワーを浴びたあと 16時前にレンタサイクルで出発。「二十四の瞳映画村」を目指して走り始めた。 ところがなかなか着かない。遠い。1時間ほど自転車をこいでどこまで来たかと 地図を見てみると、目標の半分も来ていない。この2倍、走ってたどりつくかもしれないが 帰りにもう1度同じ行程を帰るのは体力的に心配だった。まして夜にもなってしまう。 すっぱりあきらめてここまででホテルに戻った。あとで距離をちゃんと見てみると、 片道だけで20km〜30kmはある。夕方に自転車で出発して着くほど甘くはない。 小豆島を甘く見ていた。自動車は、免許は持っているが運転が好きでないということで 今回使わないことを決めていたが、やはり必要な場面があるというか、ないと制約が 出てきてしまうのは仕方ないか。

それにしても体力的に疲れた。丸亀・屋島・小豆島の観光。1日3個はなかなか大変。 小豆島のサイクリング途中、パッと目の前にきれいな海の風景が開けた場面もあった。 「すべての疲れが吹っ飛ぶ気持ちになる」かと思ったが(期待したが)、体は正直なもので、 疲れは吹っ飛ばなかった。ホテルに戻って夕食前に入浴し、脱衣所で体重を量ると56kg。 汗を多くかいた上に食事前ということで体重は減っていたが、入社以来の最軽量を記録した。 入社時の健康診断で58kg、1年半後の健康診断で一気に9kgも増えて67kgを記録。 わりとすぐに64kgくらいになってしばらく横ばいで推移していたがここ数ヶ月は ストレスもあって(?)減少気味。5月に60kgを切ったことはあったものの、ここにきて 56kgまでを記録するとは意外だった。

平和の群像 二十四の瞳から、先生と12人の生徒
島風景-1
島風景-2 ふるさと村付近
見下ろし加減で向こうに海
島風景-3 緑、海の青、海を挟んで山

結局小豆島の観光スポットと思われるところは、平和の群像以外、どこも行けなかった。 世界一狭い海峡(土渕海峡)は行くには行ったが海峡を渡ったということにすら 気づかなかった。ちょっともったいなかったかな、とも思うが仕方ないな。 それでもホテルで予約していた夜の海鮮料理のコースはかなりよくて、堪能した。 体重も少し戻せたかな? 写真は撮り忘れたがメニュー一覧をもらった。

  • 前菜
  • 大あさりと鯛のホイル焼き
  • さよりの酢の物
  • 小鉢三品
    • 玉子豆腐
    • 鱧(はも)のとろろあんかけ
    • 剣先イカと野菜のヨーグルトあえ
  • 造り三種
  • 地魚の炊き合わせ
  • 天ぷら
  • 鰻の蒸し物
  • 冷やし素麺
  • 蛸の釜飯
  • 吸物
  • デザート


8月27日(土) 〜四国大学リーグどさまわりから由緒ある温泉へ〜

早朝に小豆島を出てフェリーで高松へ。高松から讃岐に移動。讃岐津田駅から タクシーでみろく球場へ。10時から四国大学リーグ開幕戦の一つ、四国学院大VS徳島大が 行われていた。

球場はいい球場とは言い難かった。ここしかないのだろうかと思うが香川県内なら オリーブスタジアムもあるはず。香川県内の四国学院大と、徳島県の大学の試合だから 香川の中でも徳島寄りのこの場所でやっているのかとも思ったがあとあと知るところに よると、四国学院大は逆にここに近い場所にあるわけではない。安い、のかな? 外野も芝ではないが、内外野ともイレギュラーした場面はないし外野もわりと思い切って 前に出て来られている。見た目はともかく、下はわりといいのかな。

リーグトップレベルの四国学院大と、1部最下位レベルの徳島大。どれくらい差があるのかと 思ったが、試合自体は壊れなかった。個々の選手は四国学院大が上。徳島大はいい選手が 少なそうな中で懸命にがんばっているかんじ。自分の出身である東京新大学リーグと比べてみると 神宮に1番近い四国学院大は、創価大のような存在かとも思ったがレベルは創価大がぜんぜん上。 四国学院大を学芸大と見ると、妙にレベルがマッチする気がした。ただしエースの 天野投手は力投型で速い球も投げており、よさそう。開幕戦ということで硬さもあるのか、 四国学院大全体にはそんなにすごさは感じなかった。徳島大は打てないけどなんとか守っている、 ということで杏林大っぽいか。リーグトップと1部最下位の差が学芸大と杏林大との差である ならばものすごいレベルが拮抗したリーグかとも思えるが、四国学院大の方が力を 出し切れていないのだろう。現に「なんでこいつがレギュラーキャッチャー?」と 思っていたヤツに代わって途中から、背番号10をつけた主将と思われるガタイのいいキャッチャーが 出てきた。一部、レギュラーじゃなかったのかも。目についたのは4番の増本選手の打撃と、 ショートの河野選手の守備、かな。徳島大は攻守ともに4番ショートの大崎選手中心の チームなのだろうと思わせた。

試合開始 山肌(?)も見える、緑に囲まれた球場
徳島大の投手(名前失念)
四国学院大・天野投手 球場風景とともに
外野も芝ではなく
バックスクリーンは壊れて使われていない

試合途中でタクシーを呼んで讃岐津田駅に移動し、電車の時間がまだあるので 地元のセルフうどん屋で讃岐うどんを食べてから高松に移動。高松からまたタクシーで 今度は県営第二球場へ。第一球場がオリーブスタジアムと命名されたもので、 第二球場も同じ敷地内にある。なぜオリーブスタジアムを使わないのかと思ったが、 別の野球で使っていたらしい(少年野球? 高校野球?)。今度は香川大VS松山大。 着いた時点で松山大が5-0とリードしていた。

リードしていたのはいいのだが筆者が着いてからは5点差があまり動かないまま推移した。 四国学院大との優勝争いに常に絡める松山大と、ほとんど上位には来ない香川大。 やはり個々には松山大が上と見えた。流通経済大のようなかんじか。ただし細かな点で 流通経済大に少しずつ劣る。あと、詰めが甘い。これは流通経済大に似ていると言えるかも。 先発の亀岡投手はやはり速い球を投げていた。香川大は攻守に劣るが亀岡投手の高く 浮いた球はちゃんと打てたりしていた。香川大の2番手・坂本投手がまったくいいとは 思わないもののとらえどころのない投球で中盤を辛抱。でも最後は松山大が突き放して コールドになった。香川大はちょっと、レベルが読みにくい。東京新大学リーグの1部最下位 より下だろう。かといって2部よりはましと思う。高千穂大未満、駿河台大以上。 1本、いいヒットを打った川村選手が一応攻守に輝いている気がしても特筆するほど でもないか、と思っていたがあとで調べたら春のベストナインを獲得していたらしい。 そこまでいい選手だったかなあ。

スタンドでは父母らしい客がちらほら。お互いコミュニケーションをとったりしているので 知り合いというか同志なのだろう。スタンドにいた筆者にまでコーヒーをご馳走してくれた。 同じチームを応援する同志とでも思ってくれたか? 香川県の球場だけあって香川大かと 思ったら松山大の応援らしい。松山(とは限らないが)からわざわざ来たのだろうか。 そう考えると、香川なのに香川大の応援はいなかったことにもなる。 このあたりにもリーグの中でのチームの位置づけ、関係者の思い入れなどをうかがい知ることもできる (うかがい知ったと思った内容が誤解かもしれないが)。


(左:オリーブスタジアム(香川県営野球場の名称も)、右:香川県営第二野球場)

球場全景 奥に壮大な山、レフト後方にオリーブスタジアム
試合風景 松山大の攻撃
試合後の香川大 不甲斐ない内容に落胆気味
試合後の松山大 大勝にも反省点あり、明日もあるし

またタクシーを呼んで高松駅へ。さすがにレンタカーでもしておくべきだったか。 高松駅から松山駅へ急行で移動。途中、今日泊まる宿(玉菊荘)のおかみさんから電話。 そういえば予約の電話以降、なんの確認も書類手続きもなかった。こちらも少し不安 ではあったが向こうもなかなか到着しないので不安になったか。何時くらいに 到着するかの確認の電話があった。

松山駅から道後温泉まで伊予鉄で移動。20時前、ようやく着いた。まずは風呂なり コインランドリーでの洗濯なり、と思っていたがとにかく夕食を済ませてほしいらしい。 夕食にした。これまた頼んでおいた海鮮料理のコース。海の幸を堪能。今日もまた満足。 メニューは昨日のオーキドホテルに似ていたが、今度は写真を。刺身お造り、煮魚、蟹、 素麺、鰻柳川風、小鉢、デザートなどなど。

夕食後、洗濯物を持って、浴衣姿でてくてくと出歩く。あまたの客引きも振り切って なんとかコインランドリーで洗濯開始。続いて道後温泉本館で風呂。入湯料400円の他、 タオル・石鹸・シャンプー、全部お金が必要なのね。タオルだけは持っていたがあとは購入。 22時半までで札止めというし、ドライヤーまで30秒10円だとか書いてあるし、なんとなく殿様だなあ...。 日本最古の温泉街。脱衣所ではなぜか全裸で 突っ立って涼んでいるおっさん。それはかまわないのだがこちらが入浴して出てきて、 まだ全裸で突っ立っているのはなぜ? 見せびらかしているのか? 温泉のあと、 コインランドリーで洗濯の終わった衣服を引き上げて宿に戻る。行ったり来たりで 何度か同じ客引きにも会う。挙動不審とも思われた? う〜ん、客引きも含めて なんだかなあ、道後温泉...。夜道は女性の一人歩きより男性の一人歩き、注意。

夜の道後温泉駅
坊ちゃん列車 飾るだけでなくたまに走る


8月28日(日) 〜松山の長い一日〜

まず午前中に坊ちゃんスタジアムを訪れる。松山駅から一駅の市坪駅。電車の中から 球場が見えて「あれがそうかな」と思ったらそちらは隣接するマドンナスタジアムだった。 香川のオリーブスタジアムのように、同じ敷地内(松山中央公園)に坊ちゃんスタジアムと マドンナスタジアムがあるのだ。市坪駅からも歩いてすぐ。香川の球場をタクシーで まわったのに比べるとえらい便利だ。10時から四国大学リーグの愛媛大VS高知大。 この日は第2戦なので、昨日の第1戦はどちらが勝ったのか、バックネット裏でビデオ撮影や スコア記録をやろうとしている学生に聞いてみた。容易には答えが返ってこない。 関係者だろうになぜ知らないのか。ようやく「高知大が勝ったみたいです」。 みたいですって何? と思って彼らのバッグを見ると「松山大」の刺繍。そうか、ビデオを撮っているのは 該当の高知大でも愛媛大でもなく、松山大の偵察部隊だったのか。松山大の本体は 高松でリーグ戦がある。本体とは別行動で地元・松山の試合を数人が偵察に来たのだろう。 リーグ戦は始まったばかり。松山大はこれから高知大とも愛媛大とも対戦する。 このあたりにも松山大が他校と「ちょっと違う」ことをうかがわせる。さて、試合。 辛うじて優勝争いに加われる第3勢力である高知大と、下位チームの中では健闘している 4位周辺の愛媛大。1点を巡るいい試合になった。高知大の小寺投手は右の本格派タイプで たまにピッと来るいい球を投げる。愛媛大の徳永投手は右サイドの技巧派タイプで 的を絞らせず好投。たまたま両方に共通していたのがわりと吠えること。特に徳永投手が ピンチを乗り切ったときの「よっしゃー!」と吠えてベンチに戻る姿は印象的だった。 いい投手戦だったが3-2で高知大が勝った。あとで柏井に聞いたが「今年の高知大は わりとピッチャーがいいんですよ。西谷と小寺っていうのがいて2本柱なんですよ。」 とのことだった。レベルとしてはどうかな、似たようなレベルの国際大と杏林大が 1点を巡る接戦を演じている、というようなかんじかな。

2日で四国大学リーグ6チームを見ることができた。実は香川でのみろく→オリーブの 移動観戦を提案してくれたのはアマチュア野球マニアのTB氏だった。普通には入手 できない四国大学リーグの日程まで教えてくれた上にこの提案だったので本当に助かった。


(坊ちゃんスタジアム正面。巨人VSヤクルトの宣伝幕も。
後日、西村投手がプロ初勝利をあげる。)

球場全景 さすが、立派!
スタンド風景
古田が2000本安打打った辺
古田が2000本安打のボール投げ込んだ辺
愛媛大・徳永投手
高知大・小寺投手

坊ちゃんスタジアムをいったん離れて松山に戻り、松山城の見学。二之丸史跡庭園は なんてことないな、なんて思っており、はるかかなたの上方に天守閣らしきものは見える。 たぶんあそこまでは行けないんだろう、庭園しか見られないならば物足りなかったな、 などと思っていたら行ける道があるらしい。急な山道を登って登って登って...「の・ボール」。 汗だくになってようやく着いた。こんな高いところまで行けたんだ。というか、 こんな高いところに城があったら攻めてくるのも大変だ。登りきった満足感で、天守閣の 中までは入らなかった。わりと大きくてきれいな印象だった。汗だくでカキ氷を 食べているところで高校の野球部の元監督・杉山さんから電話。「(高校の)今日の試合結果、 知らないか?」とのこと。知りません、こちら松山なので。帰りはさすがにロープウェーで 降りてきた。歩かなくてもそんなものがあったのね。

公園内の堀で鳥
二之丸史跡庭園-1 通路だったところに水路をめぐらしているという
二之丸史跡庭園-2
頂上から市内を
天守閣入口 一部工事中?
売店前の武士人形 かわいい
リフト

この一帯から松山大と愛媛大が近いらしい。大学のキャンパスというのも興味があるので 行ってみた。ちょうど日本テレビの24時間テレビがやっている時期で、愛媛大ではその イベントが行われていた。知らなかったが、愛媛大には工学部もあるらしい。しかも 建物が筆者の母校の工学部よりぜんぜん立派。学会やら学会誌で、要するに筆者の関わる 学問領域で名前を聞くことがほとんどない愛媛大、こんな立派な工学部(の建物)を 持っていたんだ。ただ、グラウンドっぽいものが見つからなかった。テニスコートは あったけれど。別の場所にあるのかな。野球部はどこで練習しているのかな。 で、すぐ横に松山大。どちらが先か知らないがこれだけ近くに別の大学があるのも珍しい。 キャンパスの広さとしては愛媛大の方が広い。ただ、松山大は少し離れた別の場所にも キャンパスとグラウンドはある。グラウンドの方にも行ってみた。総合グラウンドという ことでサッカー場・陸上競技場・テニスコート・体育館などがそろっていて、なかなかの 設備である。スポーツに関しては松山大の方が力を入れているのであろうことはわかる。 ただし松山大が学問として何を掲げているのかは、キャンパスを巡ってもわからなかった。 また、総合グラウンドの方にも野球部のグラウンドが見つからなかった。これまた どこで練習しているのか...?

そう言えば、大阪経済大・東京経済大との三大学交流戦の立て看板もあった。 筆者の母校も繊維系三大学の体育大会があったが、どこも似たようなことをやっているのか。 両大学とつきあいがあることを考えると、松山大が掲げている学問は経済か?

愛媛大・松山大と隣接して松山北高校もある。あの筒井和也を輩出した高校である。 あの筒井と言われて誰がわかるのかと思うが、愛知学院大から阪神に自由獲得枠で 入団した左腕投手である。大学選手権で8人連続奪三振を記録したりもした。で、 大学・高校の立地に戻るが、一帯の立地として、正方形があって4分割して、 右半分が愛媛大、左上が松山大、左下が松山北高校といった構図である。 左右を分けるまんなかにはカレッジロードなる名前のついた道路がある。 これだけ密集するのも珍しい。逆にいろいろなことを想像してしまったりする。 愛媛大と松山大は仲がいいのだろうか、とか。おそらく何組かは双方の大学による カップルがいるんだろうな、とか。ただし両大学があまりに特色の違う大学である 場合には、双方の学生に対する意識として敵対もしくは異質であるという意識があって 必ずしも仲がよくないこともあるのかな、とか。そもそも地元の評価はどうなのか、とか。 松山北高校の学生はどちらの大学に行きたいと思うのか、とか。勉強するなら愛媛大、 スポーツするなら松山大、という筆者の勝手な想像は正しいのか、とか。 正しいならば距離が近い一方で双方の学生の親近度は近くないのではないか、とか。

愛媛大学正門 24時間テレビのイベントも
愛媛大学工学部棟 うちよりだいぶ立派だな
松山大学正門
体育館前にて 大阪経済大・東京経済大・松山大の三大学対抗戦
松山大学キャンパス内 緑に囲まれていいかんじ
松山北高校グラウンド

あとで調べたところによると、学問領域で聞いたことがないと思っていた 愛媛大では平成12年秋の情報処理学会全国大会が開催されて筆者の 指導教官もパネル討論に参加していた。また、松山大には経済・経営・人文・法学等の 学部があることと、野球部は久万の台キャンパスというところの グラウンドで練習しているらしいことがわかった。

道後温泉でお土産を勝って再び坊ちゃんスタジアムへ。夜には四国アイランドリーグの 愛媛マンダリンパイレーツVS香川オリーブガイナーズの試合があった。松山駅からの 電車にはパイレーツのTシャツを着た若者もいる。親子連れもいておそらくナイターの 観戦に行くのだろう。球場に着いてみると思ったより観客はいる。フィールドでは、 もうシートノックは終わってしまったらしい。両チームの監督・選手が一人ひとり 紹介されてベンチから出てきて整列。続いて国歌斉唱は愛媛の荒木選手。 どうやら試合ごとに順番に誰かが歌っているらしい。それが終わると全員がベンチに戻り、 やがて愛媛の先発選手が一人ひとり紹介されて歓声を受けながら守備位置に走る。 そして試合が始まる。

愛媛は西山投手が先発。少し前に、阪神が今秋のドラフトでリストアップしていると 報道された投手である。おそらくはリーグでもトップレベルなのだろう。 なるほど、いい投手だ。最速は143km/h。スライダー・フォークもよい。 また、甘い球が少ない。きれいな右本格派である。と言ってもここまで通算8勝6敗。 また、愛媛というチーム自体もこの投手を持っていながら最下位である。 四国アイランドリーグのレベルは侮れないかもしれない。 対する香川の先発・捻金(ねじかね)投手も悪くない。聞いたこともない投手だが、 直球は139km/hまでは出ている。西山投手に比べれば多少安打は浴びるもののよく抑えている。 試合は結局、3-0で愛媛が勝った。西山投手の完封である。試合後のヒーローインタビューで、 これで4試合連続完封であることが紹介された。いい投手とは思ったがそんなにいいのか。 ただしそれでも通算9勝6敗。ここにきて急によくなったのか。


(左:愛媛・西山投手、右:香川・捻金投手)

一塁側スタンド 試合開始、客はそれなりに入り始めている
三塁側スタンド ビジターなので客はまばら
メンバー紹介が終わって整列
国歌斉唱 愛媛・荒木選手
スタンド風景 親子連れが手弁当とともに
5回終了時のファンサービス
マスコット だいぶ様相の変わった村上水軍
バット引き 地元の少年野球の選手が務めるらしい
スタンド風景 マンダリンパイレーツカラーの赤ちゃん(メガホンつき)

レベルで言えば、思ったより高い。社会人野球の、クラブ以上企業以下、というかんじでは あるがだいぶ企業に近い。企業チームからすごみ、いやらしさを除いた というかんじである。すごみやいやらしさを感じないのは年齢制限で若手が多くて 経験が浅いことやまだ1年目でチームとしての成熟度が足りないことが原因かと思う。 投手と守備はよい。打撃が多少弱いが、これも年齢制限と関係があるかもしれない。 大卒・企業上がりなどもいるが、高校を出て1〜2年フラフラして入ってきたような 選手であれば、木製バット自体が初めての上に多少のブランクもある。そのあたりが 関係あるのかな、とも思った。

レベルの感想はそれはそれとして、これまでにない野球というものを見た思いで、 非常に新鮮な気持ちで帰ってきた。地元の声援である。この日、発表された観客数は 2000人くらい。800人入れば採算が取れると言われている中なので、かなり入っている。 日曜日のナイターということも関係あるだろう。親子連れ、カップル、ただのおっさん、 いろいろ来ている。そして客は、おらが町のチームを応援している。プロ野球でも 旧ダイエーホークスが福岡に本拠地を構えて地元に支持されるチームになったり、 日本ハムファイターズが北海道に移転して支持されたりして、チームと地域が密着して よい方向に向かう例は出てきている。ただしあれは世間にこれだけ根付いたプロ野球が やっていることである。こちらは、独立リーグだがそれができつつある。何が違うかと言うと、 そもそもはどこの誰だか、選手のことなどほとんど知らないところから始まっているのに いまや「おらが町の○○くん」ということで応援していることである。例えば西山投手は 松山商業高校の出身(甲子園優勝の「奇跡のバックホーム」時に2年生でベンチ入り)で地元選手、 城西大学・昭和コンクリートを経てここに至るので 経歴としても申し分ない。ゆえに彼の場合は声援を受けてもしかるべきかもしれないが、 彼はまれな方であって、大方は地元の出身でもなければ名前を知られるほどの球歴も ない選手である。でもこうやってコツコツ試合に出続ける中で個人を覚えてもらい、 中には愛称も定着し、声援を送ってもらう。Tシャツ・帽子・タオル・メガホン程度で値段も 安くはないがグッズも販売しているし、ファンはそれを手にスタンドから応援する。 家族連れは弁当を持って観戦に訪れる。赤ちゃんにまでマンダリンパイレーツカラー (オレンジ)の服を着せる女性もいる。市民球団の誕生である。実は筆者の携わる、社会人野球のクラブチーム というのも、第一目的ではないだろうがそういう思想はないことはない。ただしいろいろな困難があり、 また、当事者の努力不足もあって、市民を巻き込んでのチーム作りという段にまで 届いている例の方がかなり少ない。プロ球団がない四国だからということはあるかもしれない。 1年目で目新しいということもあるかもしれない。でも、やり方次第で、野球は応援してもらえる。 まだまだそういう下地はある。そう感じた。


8月29日(月) 〜済美の化学変化と宇和島での一目惚れ〜

道後温泉の宿を出て松山市駅から伊予鉄で南東に数駅。降り立った駅でタクシーを 拾って済美高校野球部のグラウンドを訪れた。小豆島に着いたときに学校に電話して 野球部に取り次いでもらい、スケジュールを聞いていた。当初は28日の坊ちゃんスタジアムの 合間に行こうかと思っていたがこの日は野球部が他校との練習試合で出てしまうと言う。 29日であれば自分のグラウンドに岩国高校を迎えて練習試合をするという。 本当は練習試合ではなく練習を見たかったが、まあ、仕方ない。行ってみることにした。

前に別の文章でも書いたが、済美高校に優秀な指導者がいるからと言って短期間で これだけの実績を挙げることの、論理的な説明がどうしてもつかない。それでは 百聞は一見にしかずということで見に行ってみることにしたのが今回である。 済美高校にいかなる化学変化が起きているのか。それを見たかった。見るには練習が 1番いいと思っていたのだが、うまくスケジュールが合わず、結局練習試合になったわけである。 着いたらすでに9-0と大量リードしていた。岩国高校だって何度か甲子園に出ている 山口県の強豪である。新チームなりたてのこの時期の練習試合では何を語ることも できないかもしれないが、さすが済美は強いのだろう。結局12-3で7回で終わった。 もともと7回で切ることになっていたのだろう。もう1チーム、佐賀の多久高校というのが 来ていたから3チームによる変則ダブルヘッダーで7イニングずつ、という話にでも なっていたのだろう。結局「化学変化」を目にすることはなかった。甲子園のテレビ中継では ベンチでニコニコしている上甲監督が、まったくニコニコせずにワンプレーごとに 選手を叱りつけているのは確認した。「テレビと違うじゃん」とは思うがこの程度は 予想の範囲内である。これだけの強豪校、済美に限らず選手は叱られ通しだろう。 実際に岩国も似たようなものだった。設備面に目を移してみると、グラウンド自体は 学校とは別の場所にあって、野球場とサッカー場が1面ずつ。周囲が何もない(田んぼはある) ようなところなので、田んぼだったところを買い上げて新しく作ったのだろう。 ただし野球場としてはごく普通のかんじ。外野も芝ではない。雨天練習場のような 施設も見当たらない(部室棟はあった)。ライトの奥にとりかごっぽくなっているところがあって打ち込みは できそう。レフトとライトのファールグラウンドに投手二人くらいは投げられるブルペンはある。 バックネット裏に放送室と監督室を兼ねたような部屋があってバックネット裏にだけ スタンドがある。バックスクリーンには手で点数を入れ替える得点ボードがある。 外野が芝でない点とスタンドの有無を除けば帝京大の野球部グラウンドに近いか。 まあ、それだけ揃っていれば立派ではないかとも思うが、新興の強豪ということで、 最新鋭のバーンとした、公式の野球場と同じようなヤツがあるのかと思っていただけに、 「普通の私立強豪校」という程度の感想で帰ってきた。

済美高校から鷹ノ子駅に向かうタクシーの中で運転手と雑談。高校野球の話になったりも したのだが、ふと「何年生ですか?」とか聞かれる。「いや、自分はもう学生は終わっていて 働いていて...」とか答えたのだがどうもかみ合わない。どうも筆者に子どもがいて 子どもが野球をやっていてその子どもが何年生(小学生?)なのかを聞いた風だった。 おいおい、子どもはいないし、いてもそんなに大きな子どものいる年齢じゃないよ。

グラウンド全景
試合終了
グラウンド一部(レフトフェンス) 「やれば出来る」の横断幕

松山駅に戻って電車で宇和島駅へ。15時前に着いて駅に隣接するクレメント宇和島に チェックイン。少しして歩いて宇和島城へ。天守閣が16時までに入らないといけない というので、少し急いだが、これまた松山城ほどではないにしろ高いところにあって 一生懸命山道を登って汗だくになった。登ってたどりつくと、なんともきれいな城だった。 「色白美人」。そんな言葉があうような城。今回たどって見学した城の中で、 1番きれいな城だった。白さがきれい。魅せられた。引き込まれた。色白美人に一目惚れした思いになった。

天守閣に向かう山道
天守閣から周囲を臨む 海(太平洋?)も近い
少しはなれたところから

書いていて思い出したが、Judy and Maryの「BLUE TEARS」という曲の歌詞に
「限りなく白い雪のジオラマになる」
という一節があるが、限りなく白いというのは純粋な白に近いのか、 純粋な白なのか? もっと白いのか? RGB=(255,255,255)が純粋な白とすると RGB=(254,254,254)? RGB=(255,255,255)? 255を超えるのか?

宇和島城から少し歩くと宇和島東高校がある。甲子園出場経験もあるし、それこそ 現済美高校の上甲監督がセンバツ甲子園で初出場初優勝をさせてしまった高校である。 また、卒業生に現ヤクルトスワローズの岩村がいる。ちょうど(というのもおかしいが) 岩村の母親が亡くなったが岩村はシーズン中ゆえに葬儀にも戻らなかったと報じられていた 時期だった。この周辺で葬儀が行われたということでもあろうか。俺が代わりに母校に来たぞ、岩村。 それはそれとして、宇和島東高では野球部が練習中だった。今回見学に訪れたいくつかの甲子園出場経験校、 練習を見ることができたところはなかったが今回は見られるか、と思ったらグラウンドの 周囲は中を隠すように白いカーテンぽいものをずっとめぐらしてある。学校内のグラウンド なので野球部だけで使うグラウンドではないかもしれないが、そんなに隠さなくても...。 仕方ないので校門から入って写真だけ撮ってすぐ出てきたが、ちょうど練習が小休止に なった時だったらしい。残念。まあでも、強豪校とは言えこれまたグラウンドとしては 普通の学校のグラウンドというかんじ。どこもそんなものなのか。そう考えれば 野球部専用球場を持っている済美高校はやはりすごい方なのか。

宇和島東高校正門
宇和島高校グラウンド
宇和島駅前のオブジェ 闘牛?

ホテルに戻って食事に出る。ガイドブックにあった「ほづみ亭」。刺身盛合せ5点 (まぐろ・かつお・はまち・いか・あじ、だったと思う)。くじらのなんとかかんとか、 も頼む。ビールと並行して三間(宇和島の近くらしい)の焼酎もいただく。 地鶏のからあげは大きくて大学近くの「富士ランチ」の鶏のからあげ定食を思い出してみたりする。 鯛めしを頼んでみると、想像していたものと違う。鯛をいっしょに炊き込んだような ものかと思っていたら、汁につかった鯛が出てきて、卵の黄身もつぶしてごちゃまぜにして汁と鯛を ご飯にぶっかけろとのこと。実は筆者は生の卵が苦手で、卵のみならずご飯にいろいろ混ぜたり ぶっかけたりするのは苦手であるのだが、仕方ない。食べた。これはこれでおいしかった。

刺身盛合せ5点
地鶏のからあげ登場 ビールと焼酎も並行
鯛めし ぶっかけたところ


8月30日(火) 〜高知の大自然〜

早朝に宇和島を出て電車で江川崎という駅へ。この駅になんのこだわりもなかったが、 たまたま四万十川沿いにある。四万十川の下流の町・中村は高知に行くにも西側の海に 行くにも一つの拠点にはなるが宇和島から電車で行くにはかなりの遠回りになる。 江川崎で下車してタクシーで川沿いに中村まで下ることにした。

江川崎駅でタクシー会社に電話して、来るには来て乗せてくれた。ところが途中までしか 行けないという。話を聞いてみると、タクシー会社は運転手が三人くらいしかいないところに もってきて二人が夏休み(普通は一人いれば十分らしい)。しかもこの日にある時刻にある客を宇和島の 病院だかまで乗せなければいけない予約が入っているので途中まで行って引き返すという。 中村のタクシー会社に連絡してこちらに向かってもらっているので会ったところで 乗り換えになるという。珍しい、タクシーの乗継ぎである。この、1台目のタクシーに乗っている 時間帯に、一時的にすごく強い雨が降った。少しは水不足も解消か?

途中で本当に2台目のタクシーが現れて乗継ぎ。このタクシーの運転手との出会いは大きかった。 四万十川の観光に来たことを伝え、そんなには急いでいないが中村で遊覧船に乗ろうと 思っていることなどを伝えたら、それならいろいろ案内しながら走ってくれるという。 1台目の運転手にも言われたが、今年は水不足だから川の水も少ないという。 昨年は台風の連続で多かったとのこと。 そして、今の季節だと川は緑っぽく見えて、青ではないという。ガイドブックの イメージだと青い色なのだが、そういう色になるのは11月〜2月ごろという。 確かに、水の少なさと青色ではないことで、日本最後の清流を指して失礼ではあるが 特別きれいという印象ではなかった。 で、この運転手は沈下橋をいくつかめぐって、実際に降ろしてくれたり写真を 撮ってくれたりした。また、遊覧船に乗るなら下流の中村よりも中流・上流の方が よいと言われて、中流あたりの遊覧船に乗せてくれた。遊覧船を降りるまで待っていて くれるという。親切な運転手。遊覧船はなかなかよかった。2組の家族連れらしい大人3人・子ども4人の集団が いっしょでうるさかったという欠点はあるにせよ、ゆったりと流れる川でゆったりと 時間がすぎてゆく。周囲は川と山の大自然。このままこの時間が続かないかな〜。 プリンタドライバの実装がどう(本職)、とかいうことは頭から離れていた(小豆島の時点で 離れてはいるが)。「スローライフ」そんな言葉がぴったりきた。好きな人と二人で、来たいな。

四万十川は流れの遅い、ゆったり流れる川。ただ、雨によって水の量がかなり変わるらしい。 水が増えると川に隠れる沈下橋などというものもあるわけだが、かなり高い位置まで 冠水するらしい。運転手が、幾度となく説明してくれる。特に昭和10年の水害が最も 大きかったらしく、走りながら「昭和10年にはあの木のあの枝の高さまで水が来た」 「昭和10年にはあそこのあの家の、1階部分は全部つかった」とか、こと細かく説明してくれた。


(左:雄大な山と川、右:四万十川と遊覧船と俺)

沈下橋と俺 運転手撮影
川の風景 水、少なめ?
漁師
沈下橋 遊覧船から見た橋
遊覧船を降りて 運転手撮影

1台目5000円台、2台目6000円台のタクシーを乗り継いで中村駅へ。中村駅からバスで足摺岬へ。 これがまた、えらい遠いバスだった。片道1時間45分の、1930円。これまでバスで(高速バスでなく) 1番お金を払ったのは八王子駅から杏林大の420円だかくらいだと思っていたが大幅に 塗り替えた。まあでも、タクシーよりだいぶ安く、睡眠にもなるので悪くない。

足摺岬に到着。おそらくは東京から相当遠い位置に来た。東京から足摺岬に来るならば ひとまず飛行機で高知龍馬空港か? 空港から高知駅までが40分くらい。高知駅から中村駅が 電車で2時間前後。中村駅から足摺岬までのバスが1時間45分。東京からこれだけの 時間をかければ相当のところまで行けそうな気がする。四国最南端への旅は、東京からの国内最遠方まで 来たのではないかとも思わせた。岬を歩いて周り、断崖絶壁をいくつも見た。 灯台、天狗の鼻、白山洞門...。海は青く、波は白く、崖は急。しばらく見ていても飽きない。 波は規則正しく打ち寄せるようでおそらく(当然)毎回少しずつ違う。目の前の波と水しぶきは 今しか見られない。コンピュータプログラムとは違う。興味深い。 太平洋一望。太平洋ひとりじめ。都会からは遠い、遠い世界。四万十川とはまた違う趣で 自然に溶け込めそうな世界。気分よかった。それとともに、一つ気づいた。

ドブロヴニクに似ている

海に面して突き出た岬。急峻な崖。青い海から波が寄せて砕けて白。そういえば 白山洞門のような箇所も、ドブロヴニクにもあった(名前はついていなかったかもしれないが)。 そんなことも含めて、今回まわった観光地としては足摺岬が最も印象に残る地となった。

ドブロヴニクは、東欧・クロアチア国の最南東に位置する城砦都市。 南はアドレア海に面し、北はボスニアヘルツェゴビナ、東はユーゴスラビアと 国境を接する。「アドレア海の真珠」とも称される、景色のきれいな都市。

「足摺岬」看板 言ってくれるとわかりやすい
後ろにジョン万次郎
天狗の鼻から下を
足摺岬と俺
急峻な崖
真下に海を臨む プチ-ドブロヴニク
白山洞門 プチ-ドブロヴニク

中村に戻って高知に移動して高知ホテルにチェックイン。ここで大学の野球部の後輩の柏井伸二 といっしょに飲みに行くことになっていたが彼が仕事が終わらないということでキャンセルに。 翌日になった。柏井に高知市内の魚のおいしそうな店として「しゅん」を教えてもらう。 四万十川では食べられなかった、四万十川の鮎などを食べた。あじとくじらの刺身を 頼んだら、2品だけなのに舟盛の舟(小さめ)に乗ってきて、感動。

舟盛の刺身と、鮎
なんかのマリネとあさり酒蒸し なんのマリネだったかな
かつおのお茶漬け

食事中に実家の母から携帯電話に電話。ふだんは携帯電話には電話してこないが、 家の電話でなかなかつながらなくて心配して電話してきたのだろう。 旅に出ていることは言っておらず、この電話で初めて伝えた。

「四国に来てるんだよ」
「えぇ? 私たちが新婚旅行に行ったところじゃない」
「うん、それも知っていてあえて来た」
「それで、一人なの?」
「もちろん一人だよ」
「あら、じゃあつまらないわね」

おいおい、つまらなくないよ。そっちは二人の新婚旅行だったから楽しかったのかも しれないけれど。

宿泊する高知ホテルは駅前という好立地な上に部屋もわりとよかった。 二人部屋に一人で泊まれたということもあるが。また、ロビーにインターネット 接続されたパソコンが1台あって自由に使っていいとのこと。プロバイダのページに アクセスして自分へのメールをチェックした。小学校から高校までいっしょで、 その後もなにかとつきあいの続いている三人組がいるのだが(筆者以外の二人は大学も同じ)、 うち一人(N)から「来年結婚するんで、式の日程調整を...」といったメールが入っていた。 そうしたらそれに触発されたかもう一人(O)まで「実は来年1月に結婚式をあげることに なってそろそろ言おうと思っていたのだが...」と電話。三人組のうちの二人が 同日に結婚表明かよ。


8月31日(水) 〜高知のんびり〜

暑い日だった。陽はそれほどではないが蒸し暑い。これが高知の暑さなのか?

柏井はなんとか仕事を午前中で片づけて午後には筆者を迎えに来て高知市内を案内 してくれるという。午前中、高知城を見学した。ここは松山城や宇和島城ほど高いところ まで登らなくてよかった。天守閣の中は、丸亀城・宇和島城とあまり変わらない気は するが、現存の城はたいてい建て直しがあったりして建立当初とは中の造りが変わって しまっているのが多い中で高知城は建て直しはあったが当初の造りをほぼそのまま 再現できている珍しい例と言う。そう言われてみるとなんとなくおごそかな気分にも なってくる。また、内部にパネルが並べられていて城の歴史、高知周辺の歴史、 幕末期の詳細な事情などが紹介されている。しっかり見るとわりと時間がかかる。 途中までしっかり見てみたがいずれ、はしょった。

高知城を出て横山隆一記念館へ。漫画「フクちゃん」の著者である横山隆一の記念館。 中はフクちゃんが中心ではあるが必ずしもそれだけでもなく、いろいろな漫画の キャラクターも飾られている。横山隆一の生涯を紹介するような工夫もされている。 好奇心旺盛な人、いい意味で生涯少年でいた人なのだろうとも思わせる。

追手門
銅像 誰だったかな。坂本竜馬? 板垣退助かな
天守閣を遠めに臨む
天守閣内にパネル
天守閣から-1 けっこう高い
天守閣から-2
横山隆一記念館 フクちゃん

正午過ぎにいったんホテルに戻る。柏井から連絡あり。午後も行けないという。 夜にはなんとかするという。忙しくて大変だ。ホテルのロビーで メールチェックをして、出すべきところにメールも出しておいた。

柏井のせいで午後がぽっかり空いた。まずはコインランドリーに洗濯に。 松山で1度洗濯はしたが、結局旅の終わりまで持たなかった。 洗濯後はホテル前でタクシーをつかまえて土佐高校の校舎およびグラウンドに 案内してもらった。土佐高校は柏井の母校。甲子園にも出ている高校である。 年始に長崎に行ったときに柏井と同期のヒデの母校・長崎西高校の校舎とグラウンドは 訪れてあげたので柏井の母校も行ってあげようと思っていた。タクシーの運転手が わりとしゃべる人でいろいろ聞いた。今日は暑いがいつもと比べても暑い方ということ、 今は明徳義塾高校が強いが昔は高知・高知商業・土佐だったこと、四国アイランドリーグを やっていても自分(運転手さん)は興味ないこと、高知には春野や山田にいい球場はあるが ナイター設備のある球場がないこと、などを聞けた。目的のグラウンドは見ることができて、 ちょうど中学生くらいの野球部員が練習していた。土佐高校は附属中学もあるらしい。 グラウンドは、校舎とは別のところにあり、単なる学校のグラウンドと比較すれば 多少は広くて立派なかんじはした。ただ、いくつか見て思ったのは、甲子園に出るような 学校でもスタンドつき、スコアボードつき、外野芝、でちゃんと野球場の形をしているような ところは少ないんだな、ということ。地方ゆえに土地はありそうな気はするがそうそう 簡単なことでもないのだろう。結局、今回見た甲子園出場経験のある4高校の中では 済美高校が1番立派だったか。そう考えていくと今回ではないが、長崎で見た長崎西高校の グラウンドも、設備うんぬんは抜きにしても壮大な空間に囲まれてけっこう立派な しろものだったな、とあらためて思う。そうか、丸亀高校も宇和島東高校も土佐高校も、 普通の街中にあるんだな。長崎西高校グラウンドは山の中、済美高校グラウンドは田んぼの中。 そんなことも関係あるのか。

土佐高校正門
土佐高校グラウンド風景-1
土佐高校グラウンド風景-2 中学生っぽいのが練習中
土佐高校グラウンド風景-3 角度を変えてやや遠めから
高知市野球場 ついでに案内してもらう

タクシーで案内してもらってもすぐ終わり、ホテルに戻ってのんびりした。 実際はのんびりというほどでもなく、かっこよく言えば執筆活動をしていた、というところか。 日常とは違う時間を多く持てるこの四国旅行の期間、そもそもの目的の他に、 読書と執筆もできれば、とは思っていた。高知ホテルでの空き時間では家族についての 文章を執筆した(実はホテルでの宿泊や長時間の電車移動の際もいろいろ書き進めてはいた)。

17時半ごろようやく柏井がホテルに来た。度胸があるというかずうずうしいところもある柏井だが、 さすがに申し訳なさそうではある。公務員という立場ながら職場は大学にあり、 企業やら大学やら国やら県やらの共同研究事業の事務局をやっているだとかで、 とにかく自分の裁量でなかなか仕事の調整ができないのだという。 夕食には、かつおのたたきがおいしいという「たたき亭」に 連れて行ってくれた。かつおのたたき、新子のたたき、変な貝(名前失念)、土佐巻(土佐料理の巻き寿司)、 それに土佐料理に合うという「ダバダ火振」(焼酎)も頼んでくれた。たたきはおいしかった、としか 言えない。きれいですばらしい表現は出てこない。その場で火にかけるとのことで、 少し暖かさも感じた。柏井とはいろいろな話をした。今日の暑さはいつものことで、 いつもは陽が出る分もっと暑いという。運転手の話とは少し違う。野球の話もした。 高知大の投手について教えてくれたのは前述の通り。四国アイランドリーグは、 目標の1試合800人は達成できているものの県別だと差があって、特に高知は1番少ないという。 ナイター設備のある球場がないのが痛く、春野球場にナイター設備をつける話が 浮かんだこともあるが地元農家の「作物が育ちすぎる」の意見でダメに なった話をしてくれた。済美高校の話もした。練習試合を見ただけでは化学変化を 感じることができなかったことは伝えたが、柏井に言わせると、野球部創部にあたって 上甲監督が県内の中学校をかなりまわって自ら勧誘していったとのことである。 「そうだとしてもこれから野球部を作る女子高に、野球のうまい中学生が進学するか?」 と聞いたが、そこは周囲の大人も「上甲監督なら」と、いろいろな形で勧めるようなことが 起こるんでしょう、とのことだった。なんとなくはわかった。監督が自分で中学校を まわったというのは大したものだ。むろん、強豪高校の指導者は多かれ少なかれそうやって 足も使っているのだろうが。

うつぼのたたき 奥は変な貝
かつおのたたきと土佐巻
新子のたたき かつおに似ている

「たたき亭」を筆者がおごり、銀行でお金を下ろし、2次会で訪れた店もおごった。 中村でおろしたばかりだがにわかにお金がなくなってきた。さすがにタクシーでの 移動も多かったこともあり、後輩へのおごりもあってお金の減りが早い。 特に高知は金を使った気がする。 体力も、財力も、洗濯物までいっぱいいっぱいになってきた旅行終盤である。


9月1日(木) 〜アイランドリーグ再確認と感動の阿波尾鶏〜

朝、高知ホテルをチェックアウトして電車で大歩危駅へ。大歩危・小歩危はおそらく川の中の 一部分(ある一帯)の呼び名であり、ピンポイントで「ここが大歩危」というのがあるのかどうかわからない。 そういう意味では、大歩危駅で降りたあとにどこに(どこまで)歩けばよいかよくわからないのだが、 ひとまず遊覧船が出ているところを目指した。15分くらい歩けば着けた。

川沿いを歩いているときも感じたが、遊覧船に乗ってみるとより谷のすごさがわかる。 ずいぶん高いところまで緑があるな、と思える山の中で、ずいぶん低いところに川が 流れているな、と思えるほど深く削れている。そして川の両側の岩石がすごい。 えらい大きいし独特な削れ方をしている。長い長い歴史の中で自然に作られたものであるとのこと。 自然の力はすごい。四万十川・足摺岬とはまた違う感覚で自然のすばらしさを感じた。 遊覧船の説明の中で、こういうところは日本にもほとんどなくて、あとは埼玉の長瀞 くらいだとか言っていた。長瀞って名前だけ聞いたことがあって何があるのか知らないが、 埼玉にもこんな渓谷、こんな岩があるのか?


(山、川、岩)

川にかかる橋
川の風景(川沿いから)
特徴ある岩
岩の上に道 鉄道だったか自動車道だったか

遊覧船を降りてまだ時間があるので土産を購入。松山で両親への土産は買ってあったが 両祖母への土産を買っていないことを思い出した。あわてて藍染めのスカーフ(だったかな?) を購入。ついでにすだちのぬいぐるみが丸くてかわいかったので自分の部屋に飾るために買った。 「すだ吉(すだきち)」と名づけて蛍光灯からぶら下がっている。

大歩危駅から池田駅を経由して蔵本駅へ。蔵本球場があるから来たものだが、そうでもなければ、 徳島駅や鳴門ならまだしもここを訪れることは前にもあとにもなかっただろう。 なんて思っていたら調査不足で知らなかったが駅からすぐに徳島大のキャンパスもあった。 キャンパスめぐりもわりと好きな筆者なので(今回は愛媛大・松山大をまわっているし、 かつてはフランスでパリ第3大学・第4大学も見たりした)、まわってみてもよかったのだが 体力・気力があまりなかった。時間は多少あったのだが。徳島はラーメンも有名とのこと なのでラーメン屋を探したがなかなか見つからない。逆に魚介料理の店がやたら多い。 それも好きではあるが四国に来て毎日のように刺身は食べているし、今はラーメンが食べたい。 ようやく蔵本球場の裏手あたりで支那そばの店を見つけた。おいしくはあったが、 結局徳島ラーメンは食べずじまいだった。

大歩危でも感じたがこの日はとにかく暑い。徳島が暑いのか今日が特別に暑いのかわからないが、 今回の旅行で1番暑い日だと思った。高知で感じた変な蒸し暑さでなく、単なる夏の暑さだった。

蔵本球場は、広めの公園の中にある。普通の地方球場というかんじで、プロ野球を やるほどの規模ではないが高校野球ではおそらくよく使うのだろう、というかんじ。 開場前からちらほら客らしき人が来ている。女子高生くらいの若い女性もいる。 もしかすると単に「○○くんがかっこいいから」くらいの理由かもしれないが それでもこうやって来てくれるのはいいことではないか。

坊ちゃんスタジアムで四国アイランドリーグの試合を見たときは開始30分前くらいに 着いてしまったので気づかない部分もあったのだが、こちらでは試合前のファンサービスに 存分に触れることができた。シートノックが終わると、「これから1塁側売店で 徳島インディゴソックスの監督・選手が店頭に立ちます」とアナウンスがある。 行ってみると、選手も全員ではないが5人くらい出ている。かつてはプロで最多勝まで獲得した 小野和幸(現徳島監督)もちょっと太って売店に立っている。グッズを売るだけでなく、ファンからすれば 選手と触れ合える貴重な機会。サインをもらったりいっしょに写真を撮ったりしている。 グレアムもいた。関東学院大学を出たあと、神奈川のウィーンベースボールクラブで プレーしていた選手である。話したことはないが、少しは身近な気がしている選手である。 ハンサムということで人気があるようで、わりとサインや写真を求められていた。


(左:球場全景(香川ノック中)、右:試合前整列時に月間MVP表彰)

各球場でのファンサービスの仕方は、ある程度各チームに任されているのかもしれず、 全チームが同じことをやっているわけではないようだ。愛媛ではあった選手による 国歌斉唱が、徳島ではなかった。一方で蔵本球場では入場時に 「インディゴソックスニュース」みたいなA4用紙が配られ、選手のプロフィールと前試合までの 個人成績が一覧で紹介されており、また、4チームの順位表も掲載されていた。 これはよい。実は順位表がどこでも見られずに困っていた。これによると現在首位なのは 高知ファイティングドッグスで、あとは徳島・香川・愛媛と続くが、1・2位間は3ゲーム差 しか離れていないし、1・4位間が6ゲーム差。そんなには差がないというか、まあまあ リーグ戦としても楽しめるくらいの展開になっている。で、試合前には月が変わった ということでか、前月(8月)のインディゴソックスの月間MVPが発表されて表彰された。 ファンの票も入っているようなことを言っていた。賞品は地元のうなぎ屋からの 食事券。地域密着の一端も見られる。試合途中、5回終了時にはインディゴソックスの グッズを身に着けている人が先着20人、グラウンドに降りられて小野監督じきじきに ちょっとしたプレゼントももらえたりする。5回終了時のイベントは愛媛でもあったな。 試合後にはまた場内アナウンスで「これから出口のところで、監督・選手全員で皆様を お見送りします」とのこと。出口で本当に並んでいた。ここもサインや写真のチャンスでもある。 筆者は実は、グレアムの他にもう一人、徳島に「知っている」選手がいた。 流通経済大出身の山田という内野手である。ただ、東京新大学リーグの出身だから 知っているという程度で、大学時代にそんなに目を引くプレーをしていたというわけでもなかった。 リーグ出身者として気にはかけていたというか活躍を期待してはいるが、さすがに 話しかけるところまではできなかった。それでも数少ない地元選手(鳴門高校)でもあり、 攻守にソツない堅実なプレーを見せているし、ファンも喜ばせているようでもある。 この試合ではチーム唯一の得点となるタイムリーヒットを打っていた(試合は1-1で引き分け)。

球場正面から
試合前風景 ノック中に談笑も
売店風景-1 食べ物・飲み物いろいろ
売店風景-2 徳島の選手がファンサービス
プロ最多勝・小野和幸(ちょっと太って茶髪)も
売店風景-3 選手と写真撮影も
売店風景-4 ハンサム・グレアムはサインをよく求められる
試合前の選手紹介 一人ずつ呼ばれて整列
始球式 地元の女性
5回終了時ファンサービス インディゴソックスグッズを身につけた人々
スタンド風景-1 女子高生も
スタンド風景-2 華やかなお姉ちゃんも
スタンド風景-3 和服女性も
試合風景 途中からナイターに
試合後のお見送り 選手と触れ合える機会

坊ちゃんスタジアムでの観戦に続いて、より強く感じたが、要するにファンと選手との 距離が近いのである。観戦に来ているのも、野球好きのオヤジ、女子高生、和服女性、 赤ちゃんなど多岐にわたる。中には選手の恋人や家族という意味で本当に距離が近い 観客もいるのだろうが、チームとして(リーグとして)地域に密着しようとする意志は 感じられるし、部分的にはそれが市民にも届いていると感じる。試合中には、パスボールを 犯した徳島のキャッチャーにヤジが飛んだ。「草野球を見に来てるんじゃないぞ! 入場料1000円、1000円!」入場料の1000円が安いとは思わないが、ヤジった方もこの1000円で 生活が左右されるようなことでもないだろう。ただ、金額の問題でなく、「これはただの 野球ではなくて、ふらっと見に来ているわけではない」「価値があると思って見ている」 「それだけ期待しているんだ」というものを感じる。ストレス発散で悪口を言いにきた 悪意のあるヤジとは到底感じない(筆者は感じなかった)。

蔵本球場をあとにして徳島駅へ。駅に隣接するクレメント徳島にチェックイン。 かなりいいかんじのホテルで、高知ホテルに続いて二人部屋を一人で使えることになっていて 優雅に過ごした。インターネットも各部屋から無料接続できる。旅行最終日にしてようやく 自分のノートパソコンをインターネット接続することができた。 風呂とメールチェックを終えて夕食に。阿波尾鶏という鶏を食べられる焼鳥屋があるという。 「阿波踊り」は聞いたことがあったが「阿波尾鶏」などというものは、今回ガイドブックを見て 初めて知った。もともと焼き鳥自体は好きなので、食べてみることにした。 行った店は徳島駅から近い「とりとり」。21時をゆうに過ぎていたがけっこう混んでいる。 焼き鳥を順に頼んでみる。そんなに時間がかからず出てくる(思うのだが、焼き鳥ってなんで 店によって出てくる時間があんなに違うのだろうか?)。食べてみた感想、

「うんめぇ〜」。

とにかくおいしい。無理に説明しようとするなら、食感は普通の鶏肉よりも 少しやわらかいか。でもそれでいてあぶらものっている、というかんじなのかな。 「プリプリしている」という表現もガイドブックにはあった。酒はビールだけ。 十分上機嫌で帰ってきた。


9月2日(金) 〜さらば四国〜

クレメント徳島でゆったりと朝食バイキング。優雅な気分にひたる予定のところ、 周囲は背広のビジネスマンばかりなのに一人だけTシャツ姿で、ちょっと浮いてみたりする。

ひとまずチェックアウトしたが、10時40分徳島駅発のバスに乗って徳島港に向かうので そんなに時間はない。旅行前は「鳴門にも寄って...」などと考えていたがけっこう遠い。 結局徳島は実質、昨日1日になってしまった。なんとなくもったいなかったな。 徳島城跡だけ見てバスに乗った。

徳島港から東九フェリーに乗って11時半出発。太平洋をひたすら東に向かう船旅が始まった。 フェリーでは1番安い2等船室。雑魚寝に近い。毛布だけ配布されるが敷き布団はなし。 一角では大学生っぽい4人組がトランプをやってたりする。赤ちゃんと昼寝している母親もいる。 今回の四国旅行を通して、両親の話ではないが「好きな人と二人で来たいなあ」と 思う場面は何度かあったが、フェリーの雑魚寝はパスだな。筆者一人ならかまわないけれど。 まあ、そうなったらもっと高い寝室にするだろうけれど。食事もそんなにおいしくはなかった。

昼の11時半に出て翌朝の5時東京着。なにげに、かなりの長旅だ。読書などもしてみたりする。 昼寝もする。執筆活動もする。22時以降、消灯になった。果たしてちゃんと寝れるのかという 心配はあったが杞憂に終わった。電車や自動車でもそうだが、乗り物に乗っていると 適度な揺れが気持ちいいからか、わりと眠れたりする。少なくとも筆者はそうだ。 フェリーも例外ではなかった。かなりよく眠れた。


まとめ

四国アイランドリーグについては、かなり多く書いてきたが、ファンサービスという点で これまでにない野球を見てきた思いだった。スターがいるわけでもないのだが選手・チーム・リーグの 方から歩み寄っていることで、ファンとの距離は近い。プロ野球でさえも参考にできると 思う部分はある。5回終了時のファンサービスなど、四国アイランドリーグは地元企業に スポンサーになってもらってファンにちょっとしたプレゼントをしているが、これは プロ野球でも十分可能だろう。試合ごとに「第1安打賞」「ホームラン賞」「盗塁賞」などの賞品が 選手に贈られていると思うが、十分高給をもらっている選手ではなくて、観戦に来た ファンに抽選にでもしてプレゼントしたらよい。それを、ファンがグラウンドに降りて該当の選手から 直接手渡すようなことにすればファンの楽しみも増える。この程度のことなら できてもよさそうである。プロ野球の選手が売店に立ったりするのは 安全面などで難しいかもしれないが、できることはいろいろありそうだ。

一方で四国アイランドリーグの第一目的である、プロ野球界への選手の輩出ということで言えば、 長期的には失敗に終わるような気がする。現在の組織が1チーム25人程度で、4チームで100人程度。 年齢制限があるようなのである年齢に達したら翌年から強制的に追い出されるような 形になるのだろうか? 必然的に時間は限られる。今年何人がプロ野球界にドラフト指名 されるかわからないが、まあ、愛媛・西山投手を含めて1〜2人だろうか。100人の 所属選手の中から年に1〜2人しかプロになれないと考えると、まだまだプロへの間口は 狭いと感じてしまう。チャンス(年数)もそんなに多くない。1年に1度のドラフト会議で 指名されるのは100人に1〜2人。そうなったときに、それがわかってきたときに、これからも 若い野球人がここに集まるかどうかは、疑問が残る。

ただし指摘してきたように、目新しさゆえかもしれないが副作用的に地域密着の野球が 実現できつつある。野球人としても、プロへの道筋の一つではなく、これはこれで 「こういう野球に打ち込む時期が一生に1度あってもいい」というとらえ方でここを 志すのはよいかもしれない。筆者自身は実力的にもここに届かないし、届いていたとしても 人生上の進路選択としてここを通ることを選択しなかった気はするが、大学を出て 2年間だけ、野球だけを考える世界に飛び込んでみる、なんてことはちょっとうらやましい。 生活のためでなく収入も得ながら、野球に存分に取り組む。野球人の 経験としてはいいことだと思う。得がたい経験に、絶対になると思う。 そして、2試合見ただけの筆者にとっても、大変貴重な経験となった。見に来てよかった。

四国大学リーグは、もともと興味のあったリーグでもあるが、見ておいてよかった。 レベルとしてはおそらくそんなには高くない。筆者の出身連盟である東京新大学リーグと 同じくらいかやや下か。また、各チームを1試合見ただけの印象が、結果的にわりと 当たったのが自分としてうれしかった。2強をなしていると思っていた四国学院大と松山大は、 四国学院大≒学芸大、松山大≒流通経済大ということで松山大が少し上かと見たら、 この翌週に松山大が直接対決を連勝。結局勝ち点5で完全優勝を果たした。 2位には高知大が入った。これは筆者の予想を上回ったかな。 1番ふるわないと思った香川大は全敗での最下位に甘んじた。春には1位と6位だった 四国学院大と徳島大は3位と4位に。リーグ全体のレベルが拮抗していると言えばしているのかな。

観光地として最も印象に残ったのは足摺岬。大自然。脱都会。日本国内に、距離と環境、二つの意味で これだけ東京から離れられる場所があるんだ、ということがわかった。太平洋ということならば 実家のある鎌倉からも見られるには見られるが。ぜんぜん違う。四万十川とあわせて 高知で触れた大自然は印象深かった。日常を忘れられて「スローライフ」の言葉が 妙にマッチした。

食べ物としては阿波尾鶏が1番印象に残った。次は讃岐うどんかな。 海の幸は毎日のように食べて、どれも普通においしかった。帰京後しばらく(と言っても1週間程度)は 刺身を食べたいと思わないくらい、堪能した。一方で阿波尾鶏についてはぜひまた 食べたいと思って東京で食べられる店を探して食べに行った。鶏肉にしてもうどんにしても、 珍しい食べ物ではないが、これだけ種類が違うというか食べて感じることが違うものもあるんだな、と思った。

城は宇和島城が1番。規模は丸亀城も高知城も同じくらい。松山城は少し大きいか。 他の城もきれいだったり立派だったりしたのだが「一目惚れ」とまで表現できるのは 宇和島城だけ。白さ・美しさに魅かれた。形もきれいだったのかな。

毎日が新しい発見、一日一日が充実していて濃い、大変楽しい旅だった。大満足。 両親の原点の地ということもあって始まった旅ではあったが、両親の原点だの 自分の原点だのということを感じることはまったくなかった。 ただ、好きな人と二人で一周するのもいいな、とそんなことを感じる地だったし ある意味で両親が最初に訪れたことを(あとづけとしてだが)理解できる気もする。 それもまた収穫だったかもしれない。

それにしても筆者の文章は、野球についてやたら長ったらしく細かいのに観光地の 景観等の表現が下手である。それにもまして、食べ物の表現はもっと下手。 そんなことをあらためて感じる四国旅行記でもあった。


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