平成22年 東京新大学野球連盟春季入れ替え戦

1・2部入れ替え戦第3戦詳細

(この試合の記事は藤島由幸氏によるものです)

【1回表】

田頭は三者凡退の立ち上がり。球のキレは良かったと思うが、実は制球が定まっていなかった。 ただ、積極的な高千穂大のバッターが球数を投げさせるのではなくてどんどん振ってきたために助かったという感じである。

【1回裏】

後藤がいきなり四球を選ぶ。戸田も3連投の疲れがあるのだろう。杏林大ベンチは2番・藤江に 送りバントのサインを送らない。簡単にアウトを与えたくないとの判断と思われる。 カウント2−2からランエンドヒット。打者が空振りするも盗塁成功。 結果的にバントで送ったのと同じ形になる。3番・切手は四球。 1死1・2塁のピンチであったが、そのあと内野ゴロと外野フライで得点は入らなかった。

【2回】

両チームとも走者を1人ずつ出すものの無得点。

【3回表】

先頭の山田が四球で出塁。9番・宇田川はカウント0−2から送りバント。 それほど悪いバントには見えなかったが、捕球した田頭は2塁へ送球しアウト。 続く村山も1死1塁からショートへの併殺打に倒れる。

【4回表】

1死からヒットで出塁した小宮が、スルスルとスタートを切る。 セットポジションにおいて長めにボールを持っていた田頭が、味方の「逃げた!」の声に反応。 走者を挟殺しピンチの芽を摘む。

【3回裏・4回裏】

杏林大は2死からヒットで出塁するも、それぞれ無得点。

【5回表・6回表】

高千穂大はいずれも三者凡退。田頭の調子が尻上がりに良くなってきた。

【5回裏】

先頭打者・谷口がヒットを打つ。 続く後藤が、チームとしてはこの日2つ目の送りバントを初球にあっさりと決める。 やはり、杏林大のバントの精度は高い。藤江が進塁打を放ち、2死3塁。 ここで、捕手・山田がタイムを取りマウンドへ駆け寄る。 どんなことを話していたのかは、次の打者への対応を見て分かった。 入れ替え戦でもヒットを量産している切手を打席に迎えた。 山田は立ち上がりはしなかったものの、明らかに敬遠気味の四球。 この試合が1点勝負であるとの読み。高千穂大バッテリーは4番・田辺との勝負を選択。 田辺の打球は一二塁間へのゴロ。深いところでセカンド宇田川が追い付きアウトとなる。 またもやピンチを凌いだ。

【6回裏・7回裏】

杏林大は得点なし。戸田のピッチングが安定してきた。 伸びのある直球に加えて、ツーシーム系の落ちるボールにも威力がある。

【7回表】

先頭の岩間がヒットで出塁。続く小宮の1−1からの3球目。 走者がスタートしてから小宮がバントをした。ひょっとしたらサインミスなのかもしれない。 2球目まではバントの構えすらしていなかった。いずれにせよ、チャンスである。 4番・佐藤は四球を選び、1死1・2塁となり1回戦で本塁打を放った5番・諏訪を迎える。 しかし、この場面では捕手・小俣のリードが冴えた。外のボールでカウントを稼ぎ、 インコースの厳しい球もうまく使う。そして最後は2−3から内角低めの変化球で空振り三振。 2死1・2塁となる。そして、6番・山口の初球。ワンバウンドの投球を捕手がはじいたのを見て走者が動いたが、 小俣が素早く3塁へ送りタッチアウト。杏林大の応援席からは「助かった。また(走塁)ミスをしてくれた。」 との声が飛ぶ。確かにここまでは、その積極的な攻撃が裏目に出ているという気がする。 しかしながら、チャンスがあればアウトになってもいいから次の塁を狙うという指導が徹底されている様子。 この姿勢が相手にプレッシャーを与えることも事実だ。

【7回終了時】

ちなみに、ここまでに高千穂大が放った安打は3本。四球は2つ。 走者を5人出していることになるが、残塁はたったの2である。 杏林大のここまでの残塁は8。チャンスは作るものの、ホームベースが遠い。 また、田頭の投球数95に対して、戸田は125であった。

【8回表】

ヒットが1本出るものの無得点。

【8回裏】

先頭の切手がヒット。ここで、杏林大ベンチは4番打者にバントを命じる。 しかし、1死2塁から後続が凡退。

【9回表】

先頭打者・村山がヒットを放つ。ここで荻本監督がマウンドへ歩み寄って間を取る。 2番・岩間は初球をバントするが杏林大内野陣はバントシフトを敷いていた。 転がったボールは突っ込んできた一塁手の正面へ。ところが、2塁への送球がやや低い。 タイミングはアウトだったが、ベースカバーに入ったショートもワンバウンドを捕球できずピンチが広がる。 無死1・2塁。続く3番打者もバントを試みる。ここでは三塁手に取らせるバントがセオリーとされるが、少し弱い。 3塁側にマウンドを駆けおりてきた田頭が迷わずサードへ送球。自らの好フィールディングで1死1・2塁とする。 迎えるバッターは4番・佐藤。この3球目。高千穂大が選んだ作戦は、エンドランだった。 1回戦から何度も併殺を取られていた焦りなのか。しかし、佐藤の打球はサードライナー。 当然ランナーも戻ることができない。

【9回裏】

先頭打者は、この日ヒット2本の金子。1球目と4球目に2回も投球が打者の体に当たる。 出塁すればサヨナラのランナー。というよりも1部残留が決まるランナーとなる。 デッドボールでもいいから塁に出るんだという気迫が感じられたが、 主審はよけてないとの判断から「ボール」を宣告。たら・ればは禁物だが、 もし痛がる仕草を見せていたら千田主審の判定が変わっていたかもしれない。 結局この回は、三者凡退で攻撃を終える。

【10回表】

諏訪が初球を強振して空振り。確実に大きいのを狙っている。 3球目に外のボールを引っかけて内野ゴロ。 強引に打ったから打球におかしな回転がかかっていたかもしれない。 確かにショートの前でイレギュラーした。捕球できなかった。公式記録はエラー。 無死1塁で打席には山口。初めからバントの構えをしている。この日の高千穂大の送りバント失敗は2つ。 でも、1点取ればほぼ勝ちなのだから、ここはどう考えてもバントだろう。 と思っていたら、何と初球にバスターエンドラン。強い当たりがライト線を襲う。 ノーアウトなので3塁を回った諏訪に嶋田監督代行はストップの指示を与えたが、 その大きな体にブレーキはかからなかった。送球間に合わず、生還。さらに無死2塁。 送りバントを試みるが、投球ストライクの際に走者が捕手からの牽制に刺される。 実にこの試合3度目となる走塁死。ところが、ここから2者連続四球でまたもや1・2塁からのエンドラン。 内野ゴロで2死2・3塁となり、村山が適時打を放って2点目を奪った。

【10回裏】

代打・上野が三塁打を放つ。1死3塁で切手を迎えたが、戸田は見事にこの場面を切り抜けゲームセット。 被安打6、与四球4。ピンチを幾度となく招いたが、すべて切り抜け171球を投げての完投シャットアウトとなった。

【試合終了直後】

マウンド付近に歓喜の輪ができる。キャプテン・山田が感極まって涙している。 スタンドからは紙テープが投げ込まれた。応援席で大きな声を張り上げていた彼らの貢献も大きい。 少し不謹慎な内容もあったかと思うが、その独創的な応援には迫力があった。 本人たちも楽しんで声援を送っていただろうし、チームが一体となって自分たちの雰囲気を作り出し フィールド上でプレーする選手を後押しした。少し時間が経った後、その黒に染まった男たちから 「嶋田コール」が湧きおこる。この声を聞き、ベンチの中にいた監督代行が出てきた。 応援席に向かって笑顔で手を振っていた。


【コメント】

双方の大学と関係者の運命をも背負って戦われたこの試合は稀に見る大熱戦となった。 両エースの意地のピッチング。得点が入ったイニングは1つだけだったが、 得点が入らない中での攻防には特筆すべきプレーが随所にあった。

高千穂大は、見ている者の野球観を変えてしまうような斬新な野球を展開してくれた。 その方針が裏目に出ることもあったが、最後まで自分たちの野球にこだわり、 決勝打もその攻撃的なスタイルを押し通したからこそ生まれたものだった。 2部リーグで僅か1シーズンを過ごしただけでの1部返り咲き。 2番手以降の投手の整備が急務かと思うが、活躍されることを願いたい。

杏林大にとっては悪夢のようなシーズンだったと思う。 共栄大との2回戦では、勝ち点をほぼ手中に収めながら勝利がこぼれ落ちた。 4回戦までもつれた共栄大との試合もものにできず、入れ替え戦へ。 この日の試合もどちらに転ぶか分からない展開であったが、無念の敗北となってしまった。 しかし、部員数も多くとても楽しみなチーム。今後の奮起に期待したい。


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