平成23年 東京新大学野球連盟春季入れ替え戦

2・3部、3・4部入れ替え戦雑感

(この文章は匿名希望者によるものです)

2・3部

淑徳大は強かった。プレーの質だけでなく、意識も高かったように思う。 例えば、走者なしの場面でセーフティーバントを企てる選手が多かった。 前の打席でホームランを放っている向山までもがセーフティーの構えを見せていた。 恐らく、監督さんからの指示だと思われる。どれだけ効果があったかは分からないが、 「チーム全体で好投手を攻略しよう。」といった意図が感じられた。

理科大は1シーズン過ごしただけで2部から陥落してしまった。 ひょっとすると、リーグ戦における日大生物との雨中の直接対決に敗れた時点で、既に3部降格が決まっていたのかもしれない。 今回は、2部で5位以内を確保することよりも、入れ替え戦にて淑徳大に勝利することの方が難題であった。 昨秋目にした機動力を絡めた鮮やかな攻撃に比べると、ベンチとフィールドの選手たちの意思疎通ができていなかったようにも感じた。 例えば、3塁に走者を置いたケースで、打者2人が連続でブロックサインを「もう一度」要求した場面があった。 2人目の打者のときはそのままサインを変えずにスクイズを敢行。セーフティー気味だったバントがピッチャー正面に転がり 3塁走者が憤死した。それから、リードを許してから無死1塁のケースで初球にバスターエンドランを試みたことが2回あった。 しかし、相手側もきっとバントはないだろうと思える場面であったため、淑徳大には通用しなかった。 2部リーグの投手に対してこれまでのようにヒットを重ねることができず、どのように攻撃を 組み立てていけばいいのかを迷い試行錯誤している状態であるとの印象を持った。

昨年の淑徳大の3部への自動降格はやはり何かの間違いで、あれから1年が経過して元の状態に戻っただけとも言える。 だが、理科大は(もちろん日工大も)他の3部のチームが体験できない貴重なシーズンを送ることができた。 質の違う野球に触れ、思うように得点力が上がらない中で自分たちの野球を見直すきっかけにもなった。 そして何より、現在は2部の下位チームと3部にはそれほど戦力の差がないことも肌で感じることができたはずだ。 今後チームが強くなろうとする段階で、この春のシーズンの経験が大きな財産となるだろう。

最後にもう一度繰り返すが、淑徳大の強さは圧倒的だった。昨季は投手力にやや難があり優勝を理科大にさらわれたが、 1年生投手の加入で戦力を補強し正に「鬼に金棒」といったところか。2部復帰後、即2部優勝を狙う力は充分にあると見た。


3・4部

電機大のバッターが打席へ入った際に、「この前は(先週行われた第1戦には)出ていなかった。」とか 「(この代打の選手は)昔は4番を打っていた。」といった声がICUのベンチからではなく内野手から飛んだ。 事前にデータを収集して分析し、その内容を選手たちが頭に叩き込んでいる証拠だ。 エース森井も、変化球を主体として電機大打線に対し果敢に挑んでいった。 しかし、一方でこんな場面もあった。3回と5回にいずれも1死2塁で4番・滝田を打席に迎えたが、 ICUバッテリーはあからさまに勝負を避けた。「強力打線といっても丁寧にコースを突けば抑えられないことはない。 ただ、彼(滝田)だけは別格で投げるところがない。」といった判断があったのかもしれない。 ICUの試合運びは「頭を使うことの大切さ」を思い出させるような内容だった。

またもや電機大の3部昇格はならなかった。選手たちの体格の良さや大声でウォーミングアップをする姿を第三者の立場から見ると、 やはり「このまま4部に置いておくのはもったいない。」と感じる。春と秋の間は短い。 諦めずにまた挑戦してもらいたいと思う。ただ来シーズンで引退となる4年生もいる訳で、 「これが最後のチャンスになるかもしれない。」という思いで再度臨んでほしい。


総じて

代表校が選手権ベスト4まで進出し華やかなイメージのある1部リーグだけでなく、 東京新大学野球連盟にはやや戦力が劣るチームも所属している。ひょっとすると外部の人間が試合を観戦した場合、 特に年配の方からは以下のようなお叱りの言葉を頂戴するかもしれない。

「全体的にだらしない。これでは野球部ではなく、野球サークルだ。」と。

3・4部の入れ替え戦は雨が降り出した中で行われた。審判団としては迅速に試合を運営しなければならないという状況であったはずだが、 コーチャーズボックスに誰も立っていなかったりネクストバッターがなかなか打席にやってこなかったりという場面が確かにあった。 しかし、審判員の方はこのような状況に対し決してイライラすることなく注意をされていた。 最も驚いたのは、渡辺主審の対応である。イニングの合い間に「さぁ、行きましょーう!」と選手よりも大きな声で素早い攻守交代を促していた。 その甲高い声は湿度の高い空気を切り裂いてよく響いていた。 渡辺さんの姿には、ゆとり教育の中で暮らしてきた学生を引っ張る指導者としての理想像を見た気がした。 やはり野球の審判員にも、ラグビーのレフェリーと同じように「単に試合を裁くだけでなく選手を教育する」役割も担っていただきたい。

いつの日からか、殺気が漲るような入れ替え戦が見られなくなった。けれども、選手たちの姿は生き生きとしており、 普段は使うことができない立派な球場の中で心から楽しんでプレーしているように見えた。 「硬式野球をやりたい!」という学生たちからの切なる願いを聞き新規加盟を受け入れてきた当連盟は、 関東では最大の加盟校数を誇る大所帯となった。1部から4部まで、選手たちが野球をやる意味は同じではない。 しかし、野球への携わり方が異なっていても構わないと思う。 このような時代の中で、多くの人たちの思いを乗せた東京新大学野球連盟のさらなる発展を願いたい。


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